高い山に登らずに、高山植物が見たいなら
ハクサンイチゲ、チングルマ
コマクサ、ワタスゲ、イワウメ、ユキワリソウ、シラネアオイにコケモモ・・・これらの名前を見て、すぐに「高山植物だ!」と気づいた人は、植物に詳しいか、山を登る人に違いありません。
平地ではなかなか目にすることのできないこれらの高山植物たちは、文字通り「高山」に生きる植物であり、本州では2000メートル超級の山々に登らなければ目にすることができない植物です。
その希少性、物珍しさに加え、一般に山岳地帯は風が強かったり、日差しがきつかったり、岩が多かったりと、生育条件や気象条件などが厳しいため、高山植物たちはそれほど大きくはなりませんが、可憐で素敵な花を咲かせるものが多く、観察できる場所が場所なだけあって、その可憐さがストレートに目に飛び込んできて感情に訴えかけてくるためか、印象に残る花が多いような気がします。
短い山の夏、強風がごうっと吹きすさぶ中で「コマクサ」が可愛らしい花を咲かせながらじっと風が通り過ぎるのを耐えているようなその姿は、普段はあまり花に関心がない人でさえ、思わす感動してしまったりするといいます。
そんな高山植物たちに会いに行くには、やはり基本的には2000メートルを超えるような山に登るしかないわけですが、山登りをしない人、体力的な理由などで山登りができない人は高山植物を見ることが叶わないのかといえば、そんなことはないのです。自分の足で高山に登らずとも可憐な高山植物の花々を見ることができる方法が2つほどあるのでご紹介しましょう。
高い山に「自分の足で」登らずに、高山植物を見る方法1
山がちな島国である日本には2000メートルを超す山が実に250座以上あります。その中には一般観光客向けにロープウェイやリフトが設置してある山も少なからずあるのです。そう、もうお分かりですね。自分の足で山に登らずに高山植物を見る方法、その一はそのロープウェイやリフト、ケーブルカーなどを利用してしまうことです。
これならば体力がなくても、年配の方でも、高山植物を比較的楽に目にすることができるのです。中でもひと際有名なのが、中央アルプスの宝剣岳(標高2,931メートル)の直下にある圏谷「千畳敷カール」へと至る「中央アルプス駒ヶ岳ロープウェイ」です。千畳敷カールは標高2,600メートル付近に位置しますが、夏になるとチングルマ、ハクサンイチゲ、コバイケイソウ、シナノキンバイなどの高山植物が咲き乱れる風景を目にすることができるのです。
「中央アルプス駒ヶ岳ロープウェイ」の高山植物開花情報一覧(外部リンク)
コマクサ
高い山に登らずに、高山植物を見る方法2
「ロープウェイやケーブルカーなんて、邪道だ!」という方。そんなあなたに朗報です。もう一つ、2000メートル超級の高山に登らずに高山植物を観察する方法があるのです。それは北海道の山に登ること。または利尻島や礼文島など北海道の北の島に訪れること。
北海道は本州に比べると寒いため、2000メートルを超えない山でも高山植物が咲き乱れる風景を目にすることができるのです。例えば、函館から車で1時間30分ほどの場所にある標高618メートルの恵山。標高を見て驚かれた方もいるかもしれませんが、1000メートルに満たないこの恵山でも、ヒメシャクナゲ、エゾイソツツジ、サラサドウダン、タニウツギ、ガンコウランといった高山植物を観察することができます。
標高618メートルと東京スカイツリーよりも低い恵山ですが、山としては中々エキサイティングな山で、噴煙がもくもくと上がるダイナミックな風景や津軽海峡を見下ろす大パノラマの絶景が楽しめます。高山植物を見るだけならしっかり登山をしなくても、駐車場から少し歩くだけで大丈夫です。
また、北緯45度の場所に位置する礼文島や利尻島は、高い木が育つことのできなくなる境界線「森林限界」が本州よりも圧倒的に低く(※)、海岸線や海から少し上がっただけのような場所でも、本州の2000メートル以上の場所でのみ観察できるような高山植物を見ることができるのです。礼文島や利尻島は同じ北海道の恵山(北緯41度)と比較しても、かなり低いところでも高山植物を観察できます。
(※緯度が高く、気温や湿度、降雪量、照度などの、植物が育つ上で必要な環境条件が本州と異なるため。端的に言えば寒いので。)
結論
「自分の足で2500メートルの山に登る」というようなことをしなくても、ロープウェイやケーブルカーを利用したり、北海道の山や島に行くと比較的楽に高山植物を見ることができる、というお話でした。いくら登山をしなくても良いからと、結局はロープウェイの乗り場まで足を運んだり、北海道まで行かなければならないので「お手軽」という訳にはいきませんが、「重い荷物を担いで何時間も登山をしなくてもよい」というだけでもだいぶ気持ちは楽なのではないでしょうか。いずれにしても、いくらかでも手間暇をかけ、ようやく高山植物を目にした時の感動はひとしおです。ぜひ、次の夏休みには「高山植物」を観に出かけてみてくださいね。
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