2024年4月27日
ローカル・スポット ミニガイド

元三島神社

JR鶯谷駅の北口改札から徒歩すぐの場所にあるのが、元三島神社。

大山祇命を主祭神として祀る神社で、元は上野山にあったものが幕府の命により何度か移転、現在の場所に鎮座するようになったという神社です。

江戸時代には、すぐそばの根岸あたりには音無川が流れ、その水が質の高いお米をもたらしていたとか。

上野の山を背に美しい田畑が広がっていたのでしょうか。文人墨客が隠棲した土地柄でもあり、天保の改革の後は一時廃れたという記録もあるものの、のんびりとした風景が周りに広がっていたことは想像に難くありません。

しかし、そんな話も今は昔。鶯谷駅前は南口こそ国立博物館方面に豊かな緑が広がっているものの、山手線の線路の外側には飲食店が軒を連ね、ラブホテルが林立する歓楽街となっています。

そんな中にある元三島神社、初めて訪れる人には中々に驚きの環境かもしれません。

駅から歩いていくと、飲み屋の裏手となる細い路地の先に、飲み屋の建物を見下ろすような形で社殿があるのが見え、道なりに進むと前も左もホテルがある場所に鳥居があり、内側が境内となっているのです。

昼間はまだしも、夕刻以降に参拝するならば、まさに異世界の感も漂います。周囲の煌びやかなネオンと、ひっそりと静かな境内。その対比は、まさに聖と俗といった感じで人生そのものを表しているようにも思えます。

そもそも江戸時代から、神社やお寺のそばに「精進落とし」の為の飲食店と岡場所があるのは別に珍しい事例ではないわけで、例えば根津神社のすぐそばにも根津遊郭があり、一部の学生が入り浸っていたので問題になった、なんて話もあります。

そう考えると、こちらの元三島神社の現在の環境も周囲に飲食店やホテルが密集していて距離が近いために独特の雰囲気になっているだけで、ある意味本来のあるべき姿、市井の人々の普通の暮らしの中に溶け込んだ、人々に親しまれ崇敬されている神社の一つの形、がデフォルメされてそこにある、ということなのかもしれません。

元三島神社の参拝を目的に鶯谷に足を運ぶのは勿論、近くの飲み屋に来た折に、気軽な気持ちでちょっと足を運んでみてはいかがでしょうか。

元三島神社

〒110-0003 東京都台東区根岸1丁目7−11
元三島神社
Moto Mishima Jinja

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